2013年4月22日月曜日

UCSF Dr. Dhaliwal との教育セッション

本日は、当院の米国人教授のDr. Moodyが一時帰国中に来日されている、UCSF 一般内科Dr. Dhaliwal との教育セッションがありました。Dr.Dhaliwalは、あのティアニー先生の直弟子でもいらっしゃる先生です。

『終末期の鎮静』をテーマに、症例呈示からディスカッションを行いました。ディスカッションのポイントとして、家族が鎮静に反対する場合に、どのようにコミュニケーションをとるべきか?について、意見交換をしました。興味深いことに、この場合の対応の仕方が日米で異なることが、分かりました。

 今回提示した症例では、家族が一応の納得をされるまで、じっくり時間をかけて対応したため、間欠的で浅い鎮静から開始し、十分な鎮静レベルが達成されるまでに2週間の期間が経過していました。私達はこの2週間を、家族が患者との別れを受け止めるための悲嘆のケアの時間として、重要なプロセスであったと受け止めています。

一方、Dr. Dhaliwalによると、米国でも日本同様に家族が終末期の鎮静に反対した場合、典型的な対応としては、まず、反対する家族の思いを傾聴し、医療者側から出来る限りの説明は行います。しかしながら、苦痛のレベルが待ったなしの極めて強い場合では、必要以上の時間を家族への説明や納得のためには使わず、あくまでも本人の苦痛を最優先に考えて対応し、待っても1日、2日のみとのことでした。医療倫理の4原則でいう本人の自律性尊重(autonomy)最優先の考えです。
では、家族ケアは行わないのか、というとそうではありません。患者が鎮静管理となってからは、今度は、家族ケアをメインに行っていくといいます。

米国でもアジア系の患者は、程度の差はあれ、家族の意向を考慮する度合いが高くなるとのこと。患者の異なる文化背景の多様性を重んじること(cultural competency)が重要となります。

引き続き、話題は、事前指示の現場運用の難しさについてに移りました。患者の意向にそった医療を実践するには、事前指示の基となる患者の大まかな治療に関する価値観や死生観について、主治医や他の医療者が理解していることが最も重要であるとのことです。

元気なうちから細部の治療について、希望するか、しないか?、と問われても一般市民も理解できません。だからといって、医療についての希望内容を事前に全く聞いていないのも問題です。ならば、患者の意向の大枠をまず押さえよということですね。

事前指示の普及活動を、これから市民を巻き込んでどのように展開すべきか、様々なところで議論されています。上記の内容はとても示唆に富むポイントです。

Dr. Dhaliwalを囲んで。
即興でホワイトボードを使いながらのディスカッションはまさにティアニー先生を彷彿とさせるものでした。Dhaliwal先生、症例提示を担当してくれたリハビリテーション科の今井先生、ありがとうございました。