2013年2月26日火曜日

緩和ケア外来におけるALSへのサポート

皆さん、ALS(筋萎縮性側索硬化症)という病気をご存知でしょうか。

いわゆる神経難病と呼ばれる疾患の一つです。現在のところ、根本的な治療法がなく、進行性に運動神経の麻痺が進行していくために、上下肢の筋力のみならず、嚥下や呼吸の筋力も障害されてしまう、非常に難しい病気です。

このたび、安房健康福祉センター(安房保健所)で、難病支援事業の会議があり、その会議に参加する機会がありました。

当院では、ALSといえば疾患の診断から外来通院中は、神経内科が担当され、その後、外来通院が困難になれば、在宅医療部に療養の場を移して、加療、ケアがなされてきた経緯があります。そして、私達、緩和ケア科では、ALSに関わることが殆どありませんでした。しかしながら、当院の緩和ケアチームの理念は、疾患によらず、痛みやつらさの強い患者さんのサポートを行なっていくというものであり、当然ALSのような神経難病に対しても(どのようなサポートができるかどうかは未知数であっても)、可能なサポートを行なっていきたいと思っています。特に、外来通院中におけるメンタルサポートに関しては、なにかしらのサポートができると思っています。

そのように思っていたところ、昨年末より、安房地域の保健所や保健士の方との連携、そして神経内科の主治医の先生方のご理解を得て、ALSの方が少しづつ緩和ケア外来にお見えになられるようになっています。ただ、治療法がないこの疾患に対してどのような支援が私たちにできるのか、私たちが関わることで客観的に何かプラスのことがあるかどうか、はまだ不明です。

これから試行錯誤ではありますが、主治医である神経内科、リハビリ療法士、保健所、そしてALSに詳しい院外の専門家、ALSをサポートする支援者の皆さんらと連携して、サポートしていきたいと考えております。私達の支援内容によって、患者さんや家族のQOLがどうなるのかについても、できれば調べることで、支援内容のレベルも上げていきたいと思っています。

ALS患者へのメンタルサポートといってもピンとこない方も多いかもしれません。そういう方には、ぜひALSの専門家である、コロンビア大学の三本先生が書かれた以下の記事をお読みになってください。
http://www.als.gr.jp/staff/mental/support1/support1_01.html


今回、保健所で開催された難病支援事業の委員会で、神経内科医対象に、神経難病の緩和ケア研修会が初めて開催されたと伺いました。これからは、神経難病などの、神経内科疾患に対する緩和ケアのニーズが少しづつ高まってくるに違いありません。ALSの疾患に関する専門家である神経内科と、死に瀕する患者のつらさの緩和が専門である緩和ケア科が協力してよりよいケアが実践できるようにしたいものです。

ALSの患者さんは在宅で最期を過ごされることが多いため、ALS患者、家族が経験する様々なつらさや苦しさの実際やそのケアのあり方に関して、当院で最も詳しいのは在宅医療部、地域支援医療部のスタッフの皆さんです。私たち緩和ケアチームはそうした在宅医療部、地域支援医療部の皆さんのこれまでの蓄積された様々な経験からも様々なことを教えて頂き、入院や外来におけるALS患者さんへのサポートについて底上げする活動をしていきたいと考えています。
(文責 関根)




2013年2月19日火曜日

第5回房総がんケアフォーラムのお知らせ




3月2日(土)に第5回房総がんケアフォーラムが開催されます。

医療者だけではなく、地域住民の方と一緒に
『より良く生きるためにはどうすればいいのか』
を考えるひとつのきっかけとなれば…と始めました。


今回のテーマはストレートに
『人生の最期について考えてみませんか?』です。

複雑で困難な延命治療が行われる中で、
"自分らしく生きるってどんなことなのか、
そのために『どのような医療や介護を受けたい』のか、一緒に考えましょう。

ご興味のある方はどなたでもご参加できます。
当日参加も大歓迎です。
お待ちしております。

2013年2月6日水曜日

緩和ケア基礎研修会レポート

平成20年からスタートした緩和ケア継続教育プログラム

『PEACEプロジェクト』 http://www.jspm-peace.jp




当院でも毎年1回のペースでこの研修会を開催しています。5回目の開催となった今回(1/19-20)は、30名を超える方々にご参加をいただきました。


この研修会では、医師、看護師、薬剤師、セラピスト、ソーシャルワーカー、栄養士等々、バラエティに富んだ職種の方々が2日間かけて、主に身体症状、精神症状、地域連携について学びます。

形式として、ワークショップやロールプレイのセッションが多く、参加者の皆さんが積極的に意見を出し合うのも一つの特徴です。



さて、『緩和ケア』という言葉を聞くと『がん』を連想してしまう方も少なくないと思いますが、当院の研修会には、なぜか毎年必ず『普段はあまりがんを診ない』診療科からの参加があります。


これは病院全体で『疾患に拠らない緩和ケア』を実践しているあらわれであり、当然のニーズだと考えています。


今年も腫瘍内科や産婦人科の他、脳外科や感染症科、腎臓高血圧内科、家庭医診療科、麻酔科、歯科などたくさんの科からご参加をいただきました。


運営面においても今年はあらたな収穫がありました。

今回はいつもお世話になっている、君津中央病院の清水わか子先生に、『ロールプレイ』のセッションを担当していただきました。進行に関して事前に何度もメールでやりとりを行い、結果、グループ毎の職種、経験に応じた導入・設定をしていただきました。おかげで参加者からは好評のコメントをたくさん頂きました。細やかな配慮は企画側にとっても大変勉強になりました。


















他にも院外講師として山武医療センターの篠原靖志先生、千葉労災病院の安川朋久先生、三井記念病院の廣橋猛先生にファシリテーションをしていただきました。各々の病院でご活躍されている先生を迎えてのセッションは、参加者や我々にとって、非常によい刺激になりました。













終了後の感想では、

『緩和ケアと聞いて、てっきり薬の使い方を教わると思ってきたが、それ以外にもチーム医療やコミュニケーションの大切さを痛感した』

『自分が普段いろんな方々に助けられながら診療していることを実感した』

という言葉も頂き、企画側としては肩の荷が下りた気がしました。

この研修会を通して、病院内、さらにこの地域全体の緩和ケアの環境が少しでも良くなることを願って、来年に向けてしっかりと準備をしていきたいと思います。



2013年2月4日月曜日

第1回マインドフルネス勉強会

2月2日井上ウィマラ先生をお呼びして第1回マインドフルネス勉強会を開催しました。
医師、保健師、助産師、看護師、リハビリ(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)診療事務、心理士など沢山の職種、在宅診療・緩和ケア・精神科・健康管理室・保健所・児童相談所など様々な専門科の方々が院外からも多くの参加を頂きました。



マインドフルネス瞑想とは、
・注意集中力を高めるための体系的訓練
・一つひとつの瞬間に純粋な注意を向ける
・今まで意識していなかったことを意識化する
・リラクセーション、注意力、自覚、洞察力をもたらし、その人の潜在的能力を開発するための器(構え、姿勢)
・思い込みの枠から抜け出し、全体性に触れることにより癒しのプロセスを開く

です。これらは、治療困難な慢性疼痛から高血圧、摂食障害、パニック障害などの治療にも効果があるとされアメリカでは治療として取り入れられています。


今回セッションは
・念:今ここを思い出し続ける(忘れない)心→一秒前、0.1秒前を思い出す体験
・記憶による“私”の認識が成立する以前の純粋体験に触れる体験
・自分の呼吸、他人の呼吸に注意・集中・触れることで、接触<つながり<一体感<全体性(<スピリチュアルなものに触れる体験)に個々に「気づき」に得る体験をしました。


医療者はとかく「人のために」と話し、自己犠牲をすることがあります。
私自身も誰かの役に立てることが喜びで看護師を続けています(他の仕事からの転職組なのですが一番続いている仕事です)。でもどこかで不安を抱いていました。緩和ケアに携わるようになり、『自分を大切にできる分しか人を大切にできない』と聞き、ハッとしました。私は看護のやりがいと楽しさに魅せられ、仕事をしていることが生きがいになっていました。そして、私自身は人に喜ばれることでしか自分の存在意義を感じられないこと、それは自己満足であったのではないか、と思い悩みました。そこから色々な研修会・勉強会に参加をしました。そこで出合ったのが井上ウィマラ先生であり、マインドフルネス瞑想でした。
まだまだ自分を大切にしているわけではありませんが、少しずつ変わることで気持ちがより楽になり患者様やご家族と向き合えるようになりました。自分のきっかけを是非色々な方に知って欲しいと思い、数年間の準備期間を得て、当院での勉強会開催へとなりました。がん拠点支援事業でサポートくださっているメディカルスタッフのご協力があり今回の開催になりました。感謝の気持ちでいっぱいです。


【参加者から】
〇瞑想や呼吸のワークを行いながら、ありのままの自分を感じる事が、どういうことなのか、というのが、腑に落ちた感じがしました。今でも瞑想は言ってきましたが、今日ここに来られたことで、また深い気づき、生きる喜び、自分をありのままにさせてあげることについて、うまく言えませんが、分かる入り口に立てた気がします。私たちは人に触れ、感じ、治療をすることが仕事であり、治すことにこだわりやすいですが、そのひとつひとつについて、自分が感じることをフィードバックすることそのものに意味があり、それをシェアリングすることで自然に治癒ということについて、より俯に落ちる形で納得できました。これからの勉強会にも参加したいと思います。とても有意義な時間をありがとうございました。


〇今回の研修で、人の呼吸に合わせるセッションを体験してみて、これだ!!と思いました。相手の呼吸に合わせ、相手の言葉に合わせながら会話をすることを実践していきたいと思います。

〇相手の呼吸をみるのは始めてのことでした。援助職としていかに自分がふだんクライアントを十分に見ていないか、ていねいさを欠いていたか、気づかされました。モニタリングされる側も無意識のうちに相手を感じて反応していて、相互作用が生じているように思いました。

〇経験年数を重ねるごとに、他のスタッフに対して苛立つこともありストレスを感じることもあります。今日のセッションで自分が他者に対して“いい、悪い”と価値判断していたことに気づき、また、口うるさい自分は嫌われているんじゃないかと思うことがさらにストレスになっていたこともわかりました。“いい、悪い”と決めつける自分を許すことから始めてみます。スーッと心が軽くなった気がします。ありがとうございました。
次も楽しみにしています。
 
感想の一部です。

5時間という時間があっという間でした。
有意義な時間を共有させていただきました。参加者の皆様へ感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。
次回は9月14日9時~16時(予定)です。井上先生から出された『宿題』を通し学んだことを共有しましょう。
今回参加できなかった方、ご興味をもたれた方はご連絡ください。


(文責 千葉)