2013年6月11日火曜日

『城西国際大学安房キャンパス』訪問


 こんにちは。

突然ですが、現在、当科と当院の在宅医療部、がん地域連携室が合同で、とある『プロジェクト』を企画しています。


昨日、その一環として
『城西国際大学安房キャンパス』におじゃましてきました。




ここでは主に観光学部の学生さん400人(1学年100人)が勉学に励んでいるそうです。


行ってみて、まずびっくりしたのは、その環境。


明るくて長い廊下
窓からは『山と海』
廊下を挟んで全く違う景色を楽しめます。

校舎は木とコンクリを重ね合わせた、近代的なのにどこか温かみのある設計。周囲の深緑と、眼下に望む青い海は、ここはハワイかと思わせるようなリラックス感を醸し出していました。


開放的な食堂。
階段使ってウェディングパーティーもできそうです。
一般の方も利用可能だそうです。
(ウェディングパーティーはわかりません)

教室を出た廊下のど真ん中にもこんなかっこいい
吹き抜けが。外と繋がってます。

屋上からみた鴨川湾
毎年元旦は、初日の出を見たい人のために一般開放しているそうです。

上の写真のもう少し右がLA、マレーシアです。
我々も異国の地に思いを馳せました。


学生さん達も、この恵まれた環境の中で、きっと素敵な学生生活を送っているのでしょう。



さて、一体どんな企画なのか、その詳細についてはもうしばらくお待ちください。


『◯◯◯』x『緩和ケア』x『在宅医療』



必ず成功させたいと思います。


それでは。


案内してくださった事務長様や関係者の皆様に心から感謝を申し上げます。
ありがとうございました。

































2013年6月8日土曜日

在宅緩和ケア普及のバリア まずはブレインストーミングから。

今月1日に第22回滋賀緩和ケア研究会で、病院における緩和ケアと地域における緩和ケアのつながり、というテーマでお話させて頂く機会がありました。
http://jpps.umin.jp/course/file/130601_shiga22.pdf

在宅看取りがどうして増えないのか、については様々なところで議論がなされています。
8~9割のがん患者が急性期病院で最期を迎えている現在、この数字を減らして在宅看取りを増やす(現在の7%程度から、20%程度に?)、と政府や在宅緩和ケア関係者はお題目のように唱えていますが、はたしてそれは現実的なことでしょうか?

私たちは自身の家族(両親など)のために自ら仕事を休んで、自宅介護で看取ることは果たしてできるでしょうか?自分ができそうもないことを、他人に強く勧めるということは、倫理的にどうなのでしょうか?他でもない、親の看取りとあらば、仕事を長期間休んでも自ら在宅で家族の世話をする決断をする医療者はおそらくかなり少数派ではないでしょうか。在宅医療の問題は、まず自分が当事者ならどうするか、という視点を持って考えることが大切だと思います。

高い目標を挙げることは結構ですが、まず、それぞれの医療圏の関係者が、在宅緩和ケアの実績や現状がどうなのかを知るところから始めなければならないでしょう。

当院がカバーする安房地域の人口あたりの在宅看取り数は県内で群を抜いて高く、2008年の統計では、千葉県平均(人口10万人あたり約17人)の4倍近くの実績(人口10万人あたり70人以上)があります。安房地域の高い高齢化率を差し引いても、在宅看取りが他の地域より普及しています。

当院には併設の在宅医療部が、館山には亀田ファミリークリニック館山があり、それぞれのスタッフが、南房総地域の在宅緩和ケアの多くの部分をカバーしています。当院以外にも、有床診療所として専門的な緩和ケアを提供されている花の谷クリニックをはじめとした、緩和ケアに熱心な地域医師が数多く存在します。このように、恵まれた医療資源の存在によって、県内一の在宅緩和ケアの普及が達成されていることは明らかです。

このように、千葉県でもっとも在宅緩和ケアが普及、浸透した安房地域にあっても、当院の緩和ケアチームは決して現状に満足してはいません。改善策を講じるためには、在宅緩和ケア普及へのバリア因子を同定し、その各々に対する介入プランを立てなくてはなりません。

この講演会では、このバリアを6つの側面から分けて以下のように列挙してみました。
①在宅緩和ケアの医療資源不足(地域偏在)
②病院側のシステム面の問題
ソーシャルワーカー不足
マンパワーを手厚くする余裕がない
医師が抱える業務が多すぎる
“早期からの緩和ケア”が行える仕組みがない
早期からの緩和ケアに関する理解がない
経済面の影響についての検討が未実施
患者満足度への影響についての検討が未実施
③がん治療病院と在宅施設の連携関係が薄い
連携するべきメリットを感じていない
互いの診療内容を理解していない
④病院医師(医療者)の言い分
時間と労力を使って在宅医療につなげる体制がない
患者を良く知らない在宅医に任せるのは、無責任だ
安心して任せられる在宅医を知らない。
在宅医療の希望を主張する患者(家族)は多くない
在宅看取りを勧める根拠や確信がない (家族や親戚の在宅看取り経験がないので、 患者(家族)へ積極的に勧める動機づけもない)
⑤在宅医側のバリア
24時間365日拘束で終末期がん患者の看取りをする体力がない(単独開業医の高齢化)
がんの看取りをしなくても、収入面で困らない
がん患者の困難症状に対応できない
がんの痛みのケアなどに慣れていない
オピオイド処方に慣れていない
症状悪化時の入院保証がない
⑥患者(家族側)の因子
介護力がない(老老介護、複数人介護)
家族に負担をかけたくない。(医療者方が気楽)
介護士のマンパワー不足
介護休暇がとれない(休むと解雇?)
病状急変時にどうしたらよいか分からない
病院の方が安心
そこまで自宅に愛着はない
近所の目が気になる
施設で最期を過ごして何が問題なのか分からない
自宅死を積極的に希望する理由がない
 
沢山のバリア因子があり、うんざりされたことでしょう。改善可能な因子と、なかなか難しそうな因子の両方が存在します。上記のバリア因子の中から、明日からでも始められそうな介入があれば、まずはそれを実践してみることから始めてみてはどうでしょうか?上記の一つ一つのバリア因子自体が、様々な議論を要するテーマになりうるものです。これから、このバリア因子の中から特に興味のあるテーマを取り上げて、個々にその内容について吟味していきたいと思います。
(関根)
 
 











2013年6月6日木曜日

機械式PCAポンプが普及しない理由

みなさん、PCAポンプを知っていますか?
Patient Controlled Analgesia (患者自己管理鎮痛法)の頭文字をとってPCAといいます。

このPCAには3つの設定モードがあります。
1.持続投与時間 :患者さんがボタンを押さなくても、自動的に投与される1時間当たりの薬の量
2.レスキュー量(PCAドーズ):患者さんがボタンを押したときに投与される薬の量
3,不応期(ロックアウト):1回薬が投与されてから、次にボタンを押して薬が投与されるようになる 
                までのロック時間。通常10~20分の設定が用いられる。誤ってPCAボ
                タンを押し続けても薬が投与されないようにする安全装置。

機械式PCAポンプは、上記の1,2,3を自由に設定できるため、シリンジ式PCAよりもより
フレキシブルなPCA管理が可能となります。当院では、35台をME室で管理してもらい、常時15~20台程度が稼働している状況です。

私が当院に赴任したのが、2007年2月ですからもう丸6年が経過しました。機械式PCAは当時から当院には存在しましたが、数台稼働している程度の利用でしたから、ずいぶん処方数が増えたものです。

当院のような、がん診療連携拠点病院では、より侵襲性の高いがん治療を行いますから、患者さんにとって負担の強い(苦痛や痛みが強い)治療の頻度も多くなります。この場合、治療と併行したより良い痛みのサポートを行うこと(強固なサポーティブケア)が、必須条件です。機械式PCAはそのために必須なアイテムですし、現在、当院に勤務する多くのがん治療医も同感だと思います。

2007年当初は、緩和ケア科が全てのPCAを処方していました。しかしながら、夜間や緊急的に対応が必要なケースにまで全ての症例に対して、緩和ケア科が自らPCA処方対応することは現実的ではありません。そこで、当院では緩和ケア科がPCAポンプの利用マニュアルを作成し、それに沿って、がん診療科から必要時に自由にPCAを処方してもらっています。その結果、6年経過した現在では、PCA処方はその殆どが各診療科医師によって始められる状況にまで、普及、浸透しました。

各医師が自由にPCAを処方していて、安全面の担保は大丈夫か?、という指摘もあるかと思います。週1日、オピオイド処方を受けている全患者をカルテ上でチェックしていますので、リスクの高いPCA処方に関しては、このオピオイドサーベイランスでチェックするようになっています。ただ、これだけでは十分に安全性が確認できているとは言えず、この点については、最近発足した院内緩和ケア運営委員会で話し合う予定です。

このようにがん治療に必須である機械式PCAなのですが、残念ながら、日本全国を見渡すとこの機械式PCAポンプは普及していません。どうしてなのでしょうか?この最大の理由は、おそらくコスト面にあると私は感じています。

機械式PCAで用いる使い捨てタイプのプラスチック製の薬液カセット代は病院持ち出しであり、1カセットあたり、3000~5000円もするということを皆さんご存じでしょうか?麻薬注射剤の薬液量をどの程度頻回に交換するかによりますが、毎日交換となると、毎日3000~5000円が病院からの持ち出し(純支出)になってしまいます。これでは、機械式PCAのメリットを理解していたとしても、積極的に利用する施設が増えないのも理解できますね。なんとか、この状況が早く変わってほしいと思っています。

幸い、緩和ケアチームがPCA利用患者に関わる場合では、緩和ケアチーム診療加算がとれる施設であれば、1日あたり400点の加算がとれますので、カセット代程度はまかなえることになります。現時点では、緩和ケアチーム加算を有効に利用する他には、機械式PCAのコストをまかなう方策は見あたりません。

痛み医療の向上には、コストもそれなりにかかりますから、我が国が痛み医療の全般的な向上をめざし、その対策を本気で議論するのであれば、それに見合う金銭面での改善策も不可欠です。
(関根)




2013年6月4日火曜日

病院から地域へ〜啓発キャンペーンをどう企画、運営するか〜

昨日のDr.Moodyとのセッション


当科の今年度の行動目標の一つ



『地域啓発』



をテーマに話しました。




どんな内容を啓発するのかというと、


Autonomy(自主性)



医療場面における自己決定



広く言えばHealth decision




特に、私たちが多く関わるような場面で、



万が一の事態に陥った場合に、



全てをその場の医療者に任せるのではなく、



自分のことは自分で決める。



あるいは決めておく。




それを誰かに伝えておく。



元気な今は



考えたくないかもしれないけれど、



明日のことは誰にもわからない。



だから今、少しだけ考える



そのきっかけになるような



そんなキャンペーンにしていきたいと思っています。



Dr.Moodyも興味津々といった感じで、



アメリカやUCSFの体制なども交えつつ、



まず活動の目的(ゴール)を明確にすること



その上でそれに最適なストラテジーを考えること



そんな内容をわいわい話し合いました。




とても良いブレインストーミングができました。


啓発に使えそうな面白いツールもいくつか教えてもらいました。



その紹介はまた次回ということで。



それでは。