2013年12月27日金曜日

第3回マインドフルネス勉強会報告

皆様、ご無沙汰しております。2013年も残りわずかとなりました。

遅くなりましたが、今月8日に開催した第3回マインドフルネス勉強会の報告です。今回も、高野山大学の井上ウィマラ先生を講師にお迎えして講義、実習(ボディーワーク)、グループワークを含む密度の濃い勉強会となりました。院内外から多職種医療者(看護師、医師、心理療法士、リハビリ療法士、薬剤師他)約30名が参加しました。

今回のテーマは、『生まれたことの意味、自分を大切にすることと生きる力』です。
まず、最初に参加者の自己紹介、ついでマインドフルネスの概論の講義があり、その後瞑想の練習でセッションが始まりました。続いて、一粒のレーズンを数分間かけて味わい尽くすというワークを体験しました。とても不思議な体験でしたが、その体験を文章に表現し、参加者がそれぞれに自分の体験を伝え合い、その個人個人の1粒のレーズンを食べるというマインドフルな経験をシェアし合いました。参加者一人ひとり、とても個性的な経験をすることになったようです。

次に、レーズンの気持ちと題して、自分が食べられるレーズンの気持ちになりきって物語をつくるという課題に挑戦しました。“私はレーズンです”。という文章から始まるそれぞれの物語。参加者はみなそれぞれに想像力を膨らませながら、“マインドフル”にレーズンの気持ちになり話を紡ぎました。
レーズンになった自分の気持ちを表現することは、もちろん参加者にとって初めての経験です。しかしながら、直近で、一粒のレーズンを数分かけて味わい尽くす経験をしていますから、そうした状況下では、自分の中ではレーズンの存在はとても大きなものになっており、さまざまな思いが脳裏に浮かび、自分がいざ人に食べられるときにどのような気持ちになるのか、思いをめぐらしながら、
自然に頭に浮かんだイメージを数分間の短い時間に紙に書きならべておりました。。。

さて、その後はグループワークで、それぞれのレーズンの気持ちを他の参加者に順番に発表する時間です。これまた自分の内的体験を他人に披露することになり、とても気恥ずかしく感じられましたが、その気恥ずかしさことが自分自身のコアな部分に触れているからこそ得られる体験であり、その自己存在を確認している作業こそ、しっかり味わうべき作業である、との先生のお言葉に納得。皆それぞれに自分自身の物語を紡いておられ、一人として同じ物語はないことがわかりました。そして、この物語には自分が考えている”自己”が表現されていることに、一同気づきました。意外な自分を見つけた人もいれば、すでに知っている自分にふれた人も。結果的に、嫌な気分を味わったり、驚いたり、うれしかったり、などと様々な感情が湧きだしてきました。自己を知ろうとする作業には、肯定的、否定的両面の複雑な感情が入り乱れてしまい、自分の未熟さを実感してしまいます。マインドフルネス瞑想では、この揺れ動く感情をも冷静に見つめる作業を大切にし、そうしたことに一喜一憂しない大切さを学びます。

今回のこのワークは“レーズンの祈り”と呼ばれています。確かにこのワークを通じて、これは食べるという祈りにも似た経験だったと実感できました。食べるという普段何気なく行っている生活動作一つを意識して行うことで様々な深い経験が得られました。また、私たちが生きていることはどういうことなのか、私という存在はどうして今ここに生きていられるのか、といったことに思いをめぐらし、非日常のゆったりした時間が流れていました。マインドレスに日々当り前に食べている現代日本人は、一度は皆こうしたワークを経験したほうがよいと感じたのは私だけでしょうか。

午後は、誰かから自分自身にかけてもらいたい言葉をまず思い描き、その言葉を、どのような声のトーン、強弱、抑揚などで声かけしてもらいたいかを細部に至るまで自分でシュミレーションするワークから始まりました。
講師の井上先生はこのワークの目的や意図については細かくはご説明になりませんでしたが、
他人を大切にする前に、私たちが忘れていること、つまり自分を大切にすること、を実感するためのワークであったと思います。私自身もそう感じるのですが、日本人はとくに、自分をほめたり、自分にやさしくすること、とくに他人の前でそういったことを行うのは照れてしまったり気恥ずかしかったりという気持ちが全面にでやすいですね。このワークの後半では、小グループに分かれ、それぞれが自分にかけたい言葉を披露し、他のグループメンバー全員からその言葉をかけてもらうというセッションになりました。
最初は、グループのメンバー殆どが緊張してぎこちない声掛けだったりしていたのが、慣れてくると
恥ずかしさの氷も解けて、一人ひとりの表情も和やかとなり、周りの仲間から好きな言葉をかけてもらえる幸せな時間を過ごす体験をしました。他人がかけてもらいたいだろうなあ、と思う言葉を
気恥ずかしいために、普段親しい関係でも声掛けしたりしていないことが多いものです。
周りの人を思いやることを心の中で行っていたとしてもそれを実際に態度に表現しないと相手には伝わらないものです。このワークを通じて、思いや気持ちを相手に声やジェスチャーで表現することの大切さについても学べたと思います。

今回の勉強会で出された井上先生からの宿題は、グループワークで一緒になったメンバーの顔を浮かべながら、毎日、その人にために今回挙げられたいくつかの言葉の実際に唱え、離れたところから各人にメッセージを送る(祈る)というものです。なんと素晴らしい宿題でしょうか?!
私達の周りの人びとが幸せになるように、気にかけて思いをめぐらし祈ることこそ、誰にもできる
自分にとっても周りの人にとっても幸せになるための基本的な行いではないでしょうか。。。
そういった忘れかけたことを思いださせてもらえる、すばらしい時間を過ごすことができました。

以上で第3回マインドフルネス勉強会の報告を終わります。
この会にご参加してくださった皆様ありがとうございました。最後に、井上ウィマラ先生、このたびの貴重なセッションのご指導をありがとうございました。
                                                    (文責 関根)