2013年3月29日金曜日

“リハビリセラピスト向け”『がんリハ』本の紹介

『がん患者のリハビリテーション~リスク管理とゴール設定~http://www.amazon.co.jp/がん患者のリハビリテーション−リスク管理とゴール設定-宮越-浩一/dp/4758314691/ref=sr_1_2?ie=UTF8&qid=1364520472&sr=8-2



帯には『これからがんリハを学ぶ人のための実践書!!』と書かれてあり、その点で日本ではまだ数が少ない、待望の一冊です。主に当院リハビリテーション科や当科、腫瘍内科のスタッフが執筆を担当しました。以下、内容を少しだけ紹介します。

 




『なぜ、がんなのにリハビリテーション?』

緩和ケアの大きな目標の一つは、QOL(クオリティオブライフ)の向上(or 維持)とされています。『リハビリ』は、この目標を達成するためになくてはならない選択肢の一つです。我々の業界ではもはや『常識』と言っても過言ではないでしょう。


『セラピストにとっては常識なの?』

緩和ケアの世界では『常識』でも、リハビリテーションの世界ではどうでしょうか。
実は、がんのリハビリテーションは歴史も浅く、エビデンスの形成もまだまだ不十分な状況です。標準的な治療指針の構築も発展途上の段階にあり、もちろんセラピストの養成校においても『がん』に関する教育は十分とはいえないようです。
では実際のリハはどのように提供されているのでしょう。おそらく施設ごとあるいはスタッフごとの独自の判断の下に実施されていることが予想されます。
この状況で、特に新人のセラピストさんにとっては、得体の知れない『がん』患者さんのリハ依頼はある種『恐怖』なのかもしれません。


『適切な“がんリハ”を提供するために

大切なことは、適切なゴール設定とリスク管理です。しかし、がん患者さんの場合、それがなかなか難しい。

なぜか?

どうしたら適切なゴール設定ができるのか?

リスク管理のポイントは?

それを知りたい方は、ぜひ本書を手にとってご覧ください。これから『がんリハ』に携わるセラピストの方々にとって少しでも役に立つことができたら幸いです。





2013年3月19日火曜日

3月2日房総がんケアフォーラムのご報告②


こんにちは。前回お伝えしたフォーラムの報告の続きです。

第二部では、
千葉大学大学院看護学科研究科エンド・オブ・ライフケア看護学特任教授長江弘子先生~自分らしく生きるために―あなたはどんな医療や介護を受けたいですか?―~

『エンド・オブ・ライフケア』って診断名、健康状態、あるいは年齢に関わらず差し迫った死、あるいは、いつか来る死について考える人が、生が終わる時点まで最善の生を生きることが出来るように支援すること
患者とその家族と専門職者との合意形成プロセスであり、
1)その人のライフ(生活や人生)に焦点を当てる。
2)患者・家族・医療スタッフが死を意識したときから始まる
3)患者・家族・医療スタッフが共に治療の選択に関わる
4)患者・家族・医療スタッフが共に多様な療養・看取りの場の選択を考える
5)QOLを最期まで最大限に保ち、その人にとっての良い死を迎えられるようにすることを家族(大切な人)とともに目標
そのためにな、病期としてではなく、自分の生の一部としてエンド・オブ・ライフについて考え、周囲の人、大切な人と語り合う文化を作り出すことが重要である
Izumi.S,Nagae.H,Sakurai,C&Imamura.E(2012),Defining End-of-life care from the perspectibe of nursing ethics,Nursing Ethics 19(5),-818 2011年
エンド・オブ・ライフケア看護学による定義


その人にとって最善とはどういうことでしょうか?
その人らしい生き方とは?
自分らしい生き方って?
皆さんは自分自身に問いかけていますか?

これは医療者も同じで、「他人事」ではなく「自分の事」として考えなければいけないことです。
これらのプロセスは、一人で考えるのではなく、周囲の人、
大切な人と語り合う文化を作り出すことが重要であり、
日々の生活の中で培われる人とのつながりから
共に生き、共に年齢を重ねることの尊さを学び伝えていくこと』が大切であると話されていました。

誰にでも死は訪れ、老いていくのです
全ての人がエンド・オブ・ライフを自分らしく生きるために、大切な人をその人らしく見送るために
いつどんな状況になるか誰にもわからないからこそ、
日々考えて周囲に伝えておくこが大切です
(文責 千葉)

2013年3月12日火曜日

3月2日房総がんケアフォーラムのご報告①

こんにちは。
3月2日に第5回房総がんケアフォーラムを開催しました。
今年度のテーマは
人生の最期について考えてみませんか?」です。

ストレートなタイトルだったので当初は地域住民の方々に参加していただけるか心配でしたが、結果として総勢70名(医療関係者は20名弱、ほとんどが地域の方々)にご参加をいただきました。また、参加年齢層も20歳代~80歳代と幅広く、関心の高さを実感しました。
これには昨今話題の『エンディング・ノート』や、この話題がマスコミでも多く取り上げられるようになったことも影響しているのかもしれません。

最初のセッションでは『人生の最期をどう支えるか―事前指示と生命倫理―』というタイトルで、亀田医療大学看護学部の足立智孝准教授にお話いただきました。

事前指示とは『人々が意思決定能力を失った場合の、治療に関する選好を表明する口頭または書面による意思表示』と定義されています。(フィッシャーら、2007)

事前指示には以下の二つの類型があります。
(1)代理氏名型:患者本人が予め、自分が意思決定できなくなる前に、自分の代わりに意思決定してもらう人を指名
(2)内容指示型:「口頭」で指示する場合と「文章」に書き記す場合がある⇒「事前指示書」=リビング・ウイル(=生前遺言)

(2)の例として、日本尊厳死協会(現在国内で12万人以上の会員数)による『尊厳死の宣言書』があります。また国立長寿医療センターでは『私の医療に対する希望(終末期になったとき)』という書面記載形式の事前指示書を使用しています。

このように日本でも広がりつつある事前指示ですが、現時点では法的な拘束力がありません。また日本では、従来から『自己決定』より『家族の決定』を重んじる傾向があるため、より一層事態を複雑にしていると思われます。


勘違いされやすいのですが、事前指示書は一度書いたからと言って取り消せないものではなく、何度でも書き直すことができます。
『その状況』になって初めて気づくこともあるため、揺れ動く気持ちに寄り添いながら意思決定支援をしていくことが看護師の役割となると私は思いました。


話を聞いた参加者からは、
・どこにいけば『事前指示』の相談にのってもらえるのか?
・どんな書き方をすればいいのか?
など、具体的な質問が出されました。

また地域の医療関係者からは、
「地域の利用者さん?たちには、まだ事前指示を確認するのは早いと思って積極的に言ってはこなかったけど、『どう過ごしたいのか』という視点で考えると、早い段階から考えていただくことが大切であると思いました」といった感想も出されました。


普段はなかなか口に出しずらいことかもしれませんが、
『自分が自分らしく過ごすために』
『どのようにして最期まで生き抜くか』
という視点で、
『もしも病気になったときはこうして欲しい』
という意思を伝えておくことが大切であると思います。
(文責 千葉)