2012年12月28日金曜日

勉強会のお知らせ

がん・緩和ケア関連勉強会のお知らせです。


2013-2014年度は『マインドフルネス』がテーマです。


講師に高野山大学の井上ウィマラ先生をお迎えして、全4回シリーズで開催します。


第1回:医療者自身のセルフケア
第2回:自分自身と家族との関係性
第3回:生まれることの意味(周産期~老年期)
第4回:終末期とグリーフケアまで

第1回は2013年2月2日です。

“今という瞬間を意識的に生きる”

“今の自分をみつめ、自身の気持ち・状態に気づく”

という“体験”を通じて、自身が抱えるストレスに対応する方法を学んでいきます。

参加費は無料です。

どうぞ奮ってご参加ください。




2012年12月26日水曜日

安房地域がん看護勉強会(在宅ケア)

12月21日は安房地域がん看護勉強会の最終回でした。
最終回のテーマは「在宅での看護の実際」です。
 訪問看護師は「家に帰りたい」という“ご本人の気持ち”と「家につれて帰りたい」と言う“ご家族の思い”を確かめ、その人の望む場所で最期の時までその人らしく生きることが出来るように寄り添い、支えています。この気持ちは病院の看護師も同じだと思いますが、医療・治療モデルから生活モデルでより個別対応できるのが訪問看護師さん達だと得意とするところだと思います。
 がん終末期の退院調整では、準備期間が短いこと、その短い期間で調整すべきことが多い(①意志確認②医療の継続③生活の継続)ことがあげられます。退院調整看護師もいますが、やはり病棟看護師でも出来る人から速やかに始めることが大切です。家族の介護力が在宅療養の鍵となります。本人は不安でも家族が家につれて帰りたいと希望される場合は自宅での看取りが可能となることが多いといわれています。また、自宅に帰ってから、訪問看護師さん達がかかわり、介護の不安を一つ一つ解消していくことでより安心して過ごすことができるため、病院で考えている以上にご自宅での介護はご本人だけではなく、ご家族にとっても安心したものとなります。ご自宅で過ごすことは、それだけで社会的苦痛やスピリチュアルペインを軽減するとも言われています。それは、ご自身が自分の存在を少しでも確認できるからです。在宅で最期まで過ごせることはとてもすばらしいことだと思います。だからといって、在宅ケアが全てとも限らないとも私は考えています。「どこで過ごしたいか」はそれぞれの価値観があり、一人ひとり違うし、家族関係によっても違うと思っています。しかし、「帰りたい」「帰してあげたい」と言う思いをキャッチし、時期を逃さず調整することが看護師の役割だと思いました。(千葉)
 

2012年12月22日土曜日

がん告知を取り巻く状況の変化に想う ~スピリチュアルケア勉強会より

死にゆく患者の心に聴く―末期医療と人間理解今週木曜(12/20)に、月2回開催のスピリチュアルケア勉強会がありました。現在は、柏木哲夫先生のご著書、『死に行く患者の心に聴く』(中山書店)を抄読しています。柏木哲夫先生は、日本のホスピス緩和ケアの歴史を作ってこられた緩和ケア従事者では、知らない人はいないような、この分野の第一人者の先生です。

昨日読んだ一章は、“がん患者への告知”がテーマでした。ホスピスに入所してきた男性がん患者には告知がなされておらず、妻は告知には当初反対していました。しかし、残された時間のQOLをより良いものにするために、告知をすべきであるとの結論に達し、医師は、この男性患者に病名の告知を行います。ここで紹介されているのは、いわゆる“段階的な告知”のプロセスです。最初に、“あなたには腫瘍があるようです”という言葉を患者に投げかけます。その後、患者から、“それは悪いのですか?”という問いがなされます。医師は、“・・・かなり悪い”と返答。これに患者は自分の病気は“がん”なのでしょう?と。医師は、“・・・・そうです”、と答える展開。

しばらくして、今度は男性が予後について、“自分にはこの先の準備があるので、知っておきたい。あとどのくらいでしょうか?”と問います。医師は、“年単位ではなく月単位でしょう” と。“どのくらいか?”と患者が問うと、医師は、“数ヶ月でつらい波がくるかもしれない” その後、、今後は“1,2ヶ月が山でしょう”、と答えます。

柏木先生がこの本をお書きになられたのは、1990年代の前半なので、このやりとりは現在より20年も前のこと。抄読会では、20年前という時代背景も考慮して、現在だったらわれわれはどのように、同じ状況に対応しているだろうか、と話し合いました。20年前に私はまだ学生でしたが、あるディベート大会で、“がん患者に病名告知を行なうべきか否か”というテーマに関して、文献的なエビデンスを集めながら、議論したことをよく記憶しています。告知すべきかどうか、が議題になるくらいですから、告知派 vs 告知しない派、が二分していた時代です。

20年前と変わっていることと、変わっていないことがあることに気づきました。告知を取り巻く環境としては、私たち医療者は、以前に比べて格段に、悪い知らせを伝える(90%以上)ようになってきたという大きな時代の変化があります。がん告知が別段特別なことでもなくなった昨今、この本に書かれているほどの細心の注意と配慮をもって告知に臨むことは、少なくなっているとの反省が頭をよぎります。現在に比べてなんと細かい配慮をされているなあ、と感じたのは私だけではないはずです。

小出しに悪い知らせを段階的に伝える告知が日本人には向いているのではないか、とこの本の中で柏木先生は話しておられますが、その方が患者にとっては、心理的なショックも少なくて、受け止めもスムーズになるように思われます。

もう一つの疑問は、告知で婉曲的表現を用いるべきか、という点です。たしか、日本での告知関連の調査では、婉曲的表現を希望する日本人は少なくない、という結果があります。一方、婉曲表現のマイナス面として、曖昧な表現が病状認識のズレを助長しうる、という批判があります。

上記のような論点についてディスカッションするよい機会となりました。           (文責 関根)





2012年12月19日水曜日

看取りに必要な3つのこと ~大井玄先生の講演より~

今年の日本緩和医療学会の講演やセミナーの動画が学会HP上で閲覧できることをご存知でしょうか?(学会員の方限定ですが、、)

今年の特別講演は、長年、医師として看取りに従事されてきた大井玄先生のお話でした。
改めて動画で拝聴しましたが、長年の臨床のご経験と深い洞察に基づく味わい深いお話です。

看取りのケアで必要な3つのこと、、それは、
1. 患者さんに触ること
2.笑顔を作ること
3.相手の意味の世界に入ること

なのだそうです。

ひとりひとりの人間は、それぞれが、異なる意味の世界の住人として生きているという、という表現は、全くその通り、と思われてなりません。
究極的な個別ケアが求められる緩和ケアでは、患者さんのその人となりを理解することが何よりも重要です。その人が生きてきた意味の世界を知り、その世界に自分自身も身を寄せて共にいるような関係がケアを行なう上で求められるのかもしれません。

日々の臨床実践のなかでこのような感性を、自問自答しながら、磨いていきたいものです。



2012年12月18日火曜日

医学生・研修医・若手医師のための緩和ケアセミナー

ちょっと先ですが、来年3月10日に東京医科歯科大学で開催される、医学生・研修医・若手医師のための緩和ケアセミナーのお知らせです。

毎年、日本緩和医療学会では医学生、研修医、若手医師のための緩和ケアセミナーを開催しています。
http://www.jspm.ne.jp/seminar_m/seminar_m_1303s.html

対象者は、将来、緩和ケアの実践、研究を目指す医学生、研修医、若手医師(卒後10年目まで)となっています。

現在緩和ケアに従事している医師からの生の情報や、私のキャリアパスというタイトルで、各医師のたどった研修経路についての説明など、耳寄り情報が得られそうです。

このセミナー参加者に対して、日本全国の緩和ケア専門研修プログラム側からは研修に関する情報提供の機会が与えられているため、当院からも、緩和ケア専門研修(フェローシッププログラム)についての紹介を毎年行なっています。

興味のある方は、ぜひ参加されてみてはいかがでしょうか?

2012年12月14日金曜日

筑波メディカルセンター見学研修

昨日は、緩和ケアチームメンバー12名(職種内訳:医師、看護師、薬剤師、リハビリ、栄養士、チャプレン、事務。MSWと心理士は都合がつかず欠席。)で、筑波メディカルセンターの緩和医療科&緩和ケアチームを訪問し、見学と意見交換の機会を頂きました。

総論的なお話のあと、病棟見学に移り、その後は、職種別に意見交換を行いました。多忙な中、このような貴重な機会を与えて下さった筑波メディカルの緩和ケアスタッフの皆様、ありがとうございました。学んだことを今後に生かせるように、見学で学んだことをチームで改めてシェアし合う予定です。

2012年12月12日水曜日

緩和ケアは人権です!

治癒不可能な進行性の疾患がある場合に、痛みやつらさのケア(緩和ケア)を受けられることは、すべての人に保障されるべき権利(a human right)であることを、各国の政府によびかける、EAPC(欧州緩和ケア学会)によるネット上の請願書運動が始まりました。
http://www.avaaz.org/en/petition/The_Prague_Charter_Relieving_suffering

これに同意された方は、ぜひ上記サイトにアクセスされてサインしてください。

ここに書かれている文面にあるように、緩和ケアの対象疾患は、癌のみではありません。
心疾患などの臓器不全や感染症(HIV/AIDSなど)も含まれます。

また、レベルの高い緩和ケアが広く提供されるようになるには、緩和ケアの専門医研修制度の整備が必須であることもここにはしっかり書かれています。当院では、4年前から緩和ケアフェローシップを立ち上げて、専門医養成教育にも力を入れてきましたが、その理由は真にこのためです。

EAPCの熱意に習い、私達も現場から緩和ケアの必要性を訴えていきたいと思います。

2012年12月4日火曜日

『よく困る痛みの診かた』レジデントノート12月号

【雑誌紹介】


12月号のレジデントノートは『痛み』がテーマです。
http://www.yodosha.co.jp/rnote/book/9784758105408/index.html



『第5のバイタルサイン』といわれる痛みについて、『ベッドサイドですぐに役立つように』という視点から、様々な痛みについて、わかりやすく体系的にまとめられた一冊です。

今回は当科で総論(関根)、各論(蔵本)の一部を担当させていただいています。

様々な『痛みの診かた』をまとめて知りたい方、お勧めです。

2012年12月2日日曜日

DNRとDNARの違いを説明できますか?

先日、箕岡真子先生の近著、『蘇生不要指示のゆくえ』を紹介しましたが、この本は医療者の皆さんにぜひ一読していただきたい一冊です。
たとえば、DNRとDNARの用語の何が違っているのか、あなたは正しく説明できるでしょうか?DNRはDNARの簡略した用語だと思っていませんか?この答えは、この本のP20~22に明快に解説されていますので、ここではあえて答えは触れないことにします。

現在当院では、院長指示により、事前指示委員会(第二次)が立ち上げられ、どのようにDNAR指示を院内で正しく適切に運用すべきか話し合いをしています。

当院は、先日JCI(joint commision international)の再審査を受審したところですが、JCIの元機関である米国JCAHOは1988年にすべての病院に対して、DNAR指示の公式なガイドライン作成を指示すべきであるとの項目を設けています。このように、DNAR指示を正しく運用していることは各病院にとっての必須項目とされるのです。

先日このブログで説明したように、日本の医療機関では、DNAR指示が一人歩きをしている状況なので、まずは一つひとつの用語を正しく理解してもらうように、各方面に教育していくことが何よりも大切ですね。