2013年9月19日木曜日

H25年度第2回マインドフルネス勉強会報告

皆様、ブログの更新がしばらく途絶えておりましたが、いかがお過ごしでしょうか。
今、夜空には仲秋の名月が輝いています。朝晩、ようやく過ごしやすくなってきましたね。

さて、今回は、先週土曜日に開催された、マインドフルネス勉強会の報告です。

高野山大学スピリチュアルケア学科 准教授井上ウィマラ先生の指導のもと、朝9時から夕方4時まで丸1日の内容の濃い研修会となりました。

今回のテーマは、『自らの家族関係を“mindful”に振り返り、気づきを得ること』でした。

最初に講義がありその後、各参加者が、自分の家系図を書く作業に入りました。
その後、グループワークとなり、各自の家系図を他の参加者に紹介するという、ちょっとなれないハラハラするような時間となりました。

なぜ、このような作業が必要なのでしょうか。私達医療者は、日頃当り前のように患者さんの家族について詳しく尋ね、そこからさまざまな情報を入手しますが、どのような気持ちで患者さんが
私達の問診にこたえてくださっているのか、などということはあまり気にしなかったりします。
自分の家系図を書くワークは、自分の家族関係を他人に紹介し、気恥ずかしさやつらさなども伴ったりする作業を経験し、患者さんが私たちの問診のときにどのような経験しているかを疑似体験できることが、その重要な目的でもあるのです。

その後、自分の家系図のなかでの重要と思っている人物を、〇や の形の紙で切り取り、それを机やヨガマットなどのゆったりとしたスペースの上でならべて配置するというワークに入りました。
これが、家族布置(コンステレーション)という作業です。
人数は各自によって異なりますが、自分自身を含めて、10人~15人程度までの範囲を選びます。講義の中で、家族布置(family constellation)といわれても何のことがわからなかったのですが、このワークを初めて、そういうことだったのか!と理解できてきました。

自分からみて、各家族(亡くなった方も含めて)の距離を、自由に思い浮かべながら、配置していく作業は、なかなかに趣があり、心を込めるほど、さまざまな思いが浮かんできます。
亡くなった人も、心の中では常に傍にいるようなケースもあり、その場合には、自分にぴったり寄り添って配置していたり、家族布置における距離には、生死の境界を越えたところがあるのです。

あれこれ考えた末に、この配置でいいだろう、という納得の布置ができあがったら、今度は他の人の家族布置を見て回り、お互いに感想を言い合いました。それぞれの人物同士の距離がぴったり寄り添っている布置の人や、反対に、とても距離があいている人同士の配置で、時には、ヨガマットからはみ出てしまっているような配置もみられました。家族関係(への見方や理解)がいかに人によって異なっているかをこれほどよく理解できる体験はないと思えるほどでした。

午後もこのワークは続きました。
亡くなった家族を含めて布置している参加者がほとんどでしたが、その家族を思いながら、自分とその家族との距離を、少しずつ広げていく作業が次のテーマでした。その故人を思い、目の前の布置の中での距離をmindfulに離していく作業の中で、離別体験を追体験し、その人との過去における関係性や現在におけるその人へ自分自身の思いを再確認するというワークです。

とても不思議な感覚に襲われました。自分という存在は、先祖がいたからこそ、この世に生まれていることを再確認しました。また、死別した家族との親しい過去を懐かしみ、つらかった過去を振り返り、その故人のことを思い、忘れないで大切に思いつづけたい、という気持ちや、感謝の気持ちが湧きあがてきました。

続いて、その大切な故人へ手紙を書く作業に移りました。参加者それぞれに、思いを込めて、祖先への思いをつづりました。手紙を封筒にいれ、テープで封をした後、一同、病院の前に広がる
海岸の砂浜へと繰り出しました。砂浜には、事務局スタッフがすでに直径75cm?x深さ70cm?ほどのちょうどいい大きさの穴を掘ってくださっており、そこに焚火がくべられました。参加者一人ひとりが、自分の書いた手紙を入れた封筒を焚火に投げ入れます。そして一人ひとり、手を合わせて祖先や今いる家族のために祈りました。参加者すべて順番に一人ひとり思いをこめて。。。。これが井上先生が今回工夫された研修会最後の“儀式”です。

井上ウィマラ先生は、この研修会の数日前からずっと、研修でのワークで引き出されることになる、参加者それぞれの強い思いや感情の揺れをどういう形で鎮め、この研修会を安心を得た形で終結できるのか、心を砕いておられたといいます。その結果が、この“儀式”でした。
この儀式がなければ、もやもやした感情を持ったまま家に帰ることになってしまうケースも想定されましたから、井上先生のご経験、感性に裏打ちされた、大変意味のある儀式でした。

参加者の感想としては、『自分自身の家族や祖先について振り返ることができて、大変貴重な時間を過ごした』、『自分のつらい過去を思いださなくてはならず、つらかったが、その作業を経て、
今の自分をより深く理解できたことや、自分を支えてくれる家族を実感できたことは有意義だった』などという、深~いコメントが寄せられました。

遠路研修会の指導でお越しくださいました井上ウィマラ先生、ありがとうございました。
次回のマインドフルネス勉強会は12月8日に開催予定です。
ぜひ、ご参加ください!
(文責 関根)