2013年7月14日日曜日

緩和ケア普及のバリア(がん治療医からの視点)

みなさま、毎日暑い日が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか?しばらくバタバタしており、ブログを更新できていませんでした。

日本緩和医療学会では、オレンジバルーンプロジェクトという緩和ケアの普及、推進活動を過去数年精力的に行なってきました。しかしながら、緩和ケアの普及には、緩和ケアにまつわる否定的な思いがバリアとなり、まだ十分に普及しているとはいえない状況です。

今回は、緩和ケアにまつわる様々な思いについて、考えてみます。

まず、がん治療医からの視点(緩和ケアチームの活動をどう見ているのか)はどうなっているでしょうか。私たちはがん治療医の先生方から緩和ケアコンサルトの相談を受けて緩和ケアサポートが開始となりますから、治療医が緩和ケアにどのような思いを持っておられるか、把握しておくことは非常に大切なことです。

がん治療医が緩和ケア(チーム)に相談しようか、、、と思いながらも、ためらう場合に感じていることには、以下のようなパターンがあるでしょう。
①『緩和ケアチームに相談しましょうと、緩和のことを持ち出すと、患者さんがそんなに病気が進行していると感じて、びっくりしてしまうだろう』 これは緩和ケアを末期ケアと捉えています。
こうした考えを治療医の先生方がもたれるのも無理はありません。実際に、私たちが、患者さんのところに伺うと、拒否的な反応を示される患者さんや家族も少なくないからです。“まだそんなに病気が悪くないのに、どうして緩和ケアチームなんかがここへやってきたんだ”、といわんばかりの冷たい態度の患者さんや家族もおられます。でもそのような、患者さんや家族の心情も病状の経過などを理解すれば、十分理解できることです。緩和ケアをどう考えるかは、物の考え方(価値観)の違いとも言えることなので、とやかく議論しないようにしています。ただ、“私たちが考えている緩和ケア”は、病状に関係なく係わるものであることを、機会があるたびに説明するようにしています。

①については説明の仕方の工夫がこれから必要であることを示しています。
日本緩和医療学会では、新しい説明文を募集しています。みなさんもよいアイデアを出してみませんか?
http://www.kanwacare.net/newphrase/


②『緩和ケアチームに相談しても、何がよくなるのだろう。主治医以外の医師や看護師が係わるとかえって患者さんや家族が戸惑うのではないか。。。。』これは緩和ケア介入効果についてまだ実感を持っていただけていない、つまりは私たちの力不足そのものです。数年前に、海外の一流雑誌でに発表されたのですが、米国の有名病院で、進行がんの患者さんに緩和ケア介入を行なった群と行なわなかった群で、生活の質や抑うつ状態を比較した臨床研究が行なわれ、緩和ケア介入群に軍配が上がる素晴らしい成果を示しました。まだまだ時間はかかりますが、日本でも同じような成果を積み上げれば、このバリアも克服できるでしょう。

③『緩和ケアチームに紹介したら、治療方針などに関して干渉されたりしないか。』
主治医チームとは別なチームが介入すると、主治医は治療方針の主導権を奪われるのではないか、と恐れてしまい、緩和ケアチームへ相談してもらえないケースも結構あると私自身は感じています。この懸念に関しては、全く心配ありません、と自信をもってお答えできます。
なぜなら、私たちは主治医チームのニードにそった介入を目指すからです。
最近では依頼を頂いた際に、どのような関わりや介入をご希望でしょうか?と依頼の意図をより具体的に把握するように努めています。
日本にはコンサルテーションの文化はまだ十分に根付いているとはいえない状況ですが、
守るべきルールがあり、コンサルテーションエチケットなどと呼ばれています。先月の日本緩和医療学会では、緩和ケアチームの手引きなる冊子を参加者全員に配布していました。一般公開されたら、こちらにも紹介したいと思います。

このテーマを次回以降も折にふれて扱っていきたいと思います。
(関根)




 


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