2013年5月23日木曜日

腫瘍内科との症例検討会

昨晩、腫瘍内科の若手医師のみなさんに招かれて、患者症例を含む緩和ケア関連の日頃の疑問の解決を目的として、Q&A形式でディスカッションを行いました。

私が赴任した6年前、当院の腫瘍内科には医師は、2名しかいませんでした。ところが、現在は、ローテーターも含めると医師数は10名に届くような一大勢力になっています! 
今年入職された先生方も多く、オリエンテーション的な質問内容も含め、ざっくばらんな楽しい時間となりました。簡単な自己紹介ののち、以下のような質問項目等について話し合いました。

質問1.当院では、専門的緩和ケアを受けたいと希望した場合にどうすればよいでしょうか?

答え:亀田には緩和ケア病棟はつくらず(作ることができず)に現在に至っています。一番の問題は看護師が足らないことです。看取りを当院で行うケースでは、主治医チームと併診の形で、緩和ケア科(チーム)がサポートさせてもらっています。

質問2.緩和ケア科(チーム)に併診してもらったときに、どういうプラスのケアが可能でしょうか?

答え:症状のコントロールについては、主治医チームのスキルも最近は向上しつつあり、緩和ケア科の介入が必要ない症例が多くなっている印象もあります。ただし、主治医ではなく、第三者である緩和ケア科(チーム)の介入によって、より俯瞰的な立場から、患者さんや家族にとって最良のケアや、困っていることへのサポートを追加することができたりします。
また、どういう治療ゴールを選択されるのがよいのか、主治医チームが煮詰まっておられるような場合にも、第三者的な立場で、患者さんや家族の意思決定の支援を行える場合があります。
さらには、スピリチュアルな悩み(答えがでないようなつらさ)について、主治医チームのスタッフが対応に苦慮されている場合などでも、医療的な内容の詳細な検討を離れて、より患者さんの生活の視点から、具体的なサポートを提案することができたりします。
お気軽に、緩和ケアチームにご相談ください。

質問3 予後が極めて厳しい患者さんで、ご家族の悲嘆が大変強い方がおられます。担当医として蘇生しない(DNAR)ということの説明を今現在、事前に行うことは、教科書的には必要だと理解してはいる。しかしながら、悲しみのどん底にいるこの家族に、DNARの説明をすることは、心情的な負担を与えてしまうため、家族のつらさを想像すればするほど、できなくなってしまいます。家族が患者さんの死をどうしても受け入れられないこのような症例で、心停止したら、マスク換気のみ行い、そういう行為によっても患者の蘇生は困難であることを実際に見せることで、家族にその現実を受け入れてもらうという対応は、ありえることでしょうか?

回答:患者さんのご家族の心情を察すると、DNARのコード確認の作業を行う行為そのものが、家族の気持ちに対して、侵襲的であると思えてできなくなってしまう、ということは、多くの臨床医が経験してきたことだと思います。ただ、がん(悪性腫瘍)の看取りにおける心停止時に心肺蘇生を行っても、その救命率はほぼ0であることが示されています。よってこの行為は医学的に適応がない、ということです。蘇生できないと分かっていながら、みせかけの蘇生行為を行うこと(slow code)は、現在の臨床医学では、むしろ、倫理的に問題が多い行為であるとみなされています。
なぜなら、結果的に蘇生できないと分かっていながら、それを行うことは、やはり、患者に対する
嘘であり、誠実な医療行為とはみなされないからです。また、蘇生ができないと分かっていながら行うみせかけの行為によって患者さんの体(すでに死亡に至っている)を痛めつけることは、害の多い行為とみなされます。

そうかといって、家族のつらさを放置してよいわけでもなく、悲嘆のレベルが強い複雑性悲嘆の家族に対するケアを行うことによってこの問題に対応すべきです。そうしたお手伝いも緩和ケアチームの仕事の一部です。

まだまだ質問が続きました、ご紹介はこの辺まで、、、。
またご要望にそって、このようなカンファレンスを継続したいと思います。

(文責 関根)







0 件のコメント:

コメントを投稿