2012年11月12日月曜日

緩和的抗がん治療をうける患者の病状認識調査から分かったこと

先月のニューイングランドジャーナルオブメディシンで報告されていた高度進行がん患者の、緩和的抗がん剤治療に関するコミュニケーションに関する文献に関する評論です。
http://blogs.plos.org/workinprogress/2012/11/07/why-do-people-with-advanced-cancer-undergo-chemotherapy/

緩和的抗がん剤治療を受けている患者は、その治療についてどこまで理解しているのでしょうか、どのようなコミュニケーションを行う医師を好ましいと判断しているのでしょうか?この研究は、これらの点について全米各地で調査を行いました。米国の今回の研究で、多くの患者(半数以上)が緩和的抗がん剤治療で、病気が治るという認識を持っていたという結果がでています。

率直な話を杓子定規にすればよいというわけもありませんし、かといってあまりに非現実的な考えがでてきてしまうような説明では、残された時間をしっかり生きることに支障が生じてしまいます。
患者の性格や家族の意向によっても、説明や伝え方について配慮が必要ですから、この部分こそ、まさに医師としてのアートの力量が試される部分なのだ、と思います。

本日のDr. Moodyとのセッションもこの論文について話し合いました。米国では、悪い知らせを伝えるコミュニケーションのための教育やワークショップがこれまでさかんに行われてきたけれども、それにも関わらず、この文献のように、多くの患者が誤った認識をもっていることを示したこの研究は、この問題の複雑さ、難しさを物語っているという御意見でした。
米国では医師は家族への説明はともかく、患者自身にいかに病状について伝えるか、という点に大変多くの労力を使い、心を砕きます。患者が自分の病気について、知らないことは、
大切な自己決定権の侵害になり、自分自身が将来の生活プランを立てることができなくなるからです。そうした米国でさえ、進行がんにおけるコミュニケーションの結果がこのような状況なので、
日本で同じ研究を行ったら、もっと現実と病識のズレが大きいという結果になるように思います。

患者の側にしてみれば、悪い知らせを伝えられておらず、やさしく応対してくれる医師を好ましい医師であると、当座は思うことでしょう。この研究では、現在抗がん剤を受けている時点での患者の医師への評価を問うているわけです。ただ、もっと後になって、患者に率直なコミュニケーションをされた場合とそうでなかった場合に、どのように医師からのコミュニケーションを振りかえるのでしょうか?あの時に医師が率直に話をしてくれたおかげで、自宅で良い時間が過ごせた、と思う患者も中にはいるかもしれず、今回の研究は、そうした後々になっての評価については調べておらず、この点についてはなんともいえません。

多面的な問題を含み、結論がでなさそうなこのテーマですが、引き続き周りの関係者や、一般の方も含めて話し合っていくことが必要です。(文責 関根)











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