2012年11月19日月曜日

小児緩和ケア教育研修

緩和ケアチームのための小児緩和ケア教育研修(Care for Life-threatening Illness in Childhood Pediatric PalliativeCare Education Program for Palliative Care Team=CLIC-T)に参加してきました。http://kanwaedu.umin.jp/clic-t/ 


場所は大阪市立総合医療センター。
全国から80名弱の医療者が集い、上記サイト内の学習項目を集中的に学んできました。


『小児緩和ケア概論』では、成人との共通点や違いを確認しながら、小児ならではの問題(経過の多様性や成長と発達における問題、倫理的問題や家族ケア)について考えました。成人と違って、疾患が多岐にわたる(がんだけではない)ことや、子どもは発達・成長すること、自己決定権の問題、重大な病気を患った子どもの親御さんや兄弟姉妹の気持ちの問題等々、決して容易ではありませんが、それでもチームとしてサポートすることの重要性を強く感じました。

『小児の疼痛』では、痛みの評価、治療を症例をベースに考える形で学びました。成長・発達段階での痛みの体験は長期的に悪影響を及ぼすという報告も複数あり、大人同様に適切な評価・治療が必要です。しかし、子どもの訴える痛みは、コミュニケーションの難しさから(大人以上に)過小評価されやすいということもまた事実です。
ここでは小児の疼痛に対する適切な評価と有用なツール、治療面では今年改訂されたWHOの小児疼痛ガイドライン(ICPCNのサイトから無料で閲覧できます➡WHO guidelines on the pharmacological treatment of persisting pain in children with medical illnesses
をベースに、2段階の治療(成人ラダーは3段階ですが小児は2段階)や、非オピオイド・オピオイドの推奨薬や開始量等々、成人と共通する部分・異なる部分を意識しながら学びました。その他にも両親の関わりを担保することや、非薬物的ケアについても考えさせられるセッションでした。

『小児医療と倫理』では、(成人にとっても十分にデリケートな話題である)延命治療の是非や治療の中止・差し控えの問題について、小児のケースで状況の異なる症例をグループで話し合いました。倫理理論における帰結主義(結果の善し悪しによって判断)や義務論(結果によらず従うべき義務に則る)や医療倫理の四原則、欧米での治療中止・差し控えの現状、ガイドラインや判例も組み込まれた、とても濃いセッションでした。

『死が近づいたとき』では、やはり症例をベースとして①症状緩和②ケアの見直し③家族との対話のポイントをグループで話し合いました。子どもだから苦痛を感じない、ということはなく、最後の1ヶ月ではその多くが成人と同様に疼痛、倦怠感、呼吸困難などの苦痛を感じているという報告があります。このような状況下でできること・やめたほうがいいことは何か、鎮静の問題、本人・家族に対していつ何をどの程度共有しておくべきか、などについて、話し合いました。

『ビリーブメント(親しいものとの死別)』では、子どもを亡くすということが家族にどんな影響を及ぼすのか、どのようなケアが好ましいのか、医療者の役割とは何か、患児の兄弟姉妹へのケアなどについて考えました。また、後半ではがんの親を持つ子どもへのケアについて、何をいつからどのように伝えるか、避けるべきこと、子どもに病気のことを話すヒントなどについても紹介していただきました。

非常に有意義な一日でした。

これだけの研修会を企画運営してくださった関係者の皆様に心から感謝するとともに、このご苦労に報いるためにも、現場でこれを活かしていきたいと思います。



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