2012年10月15日月曜日

ジャーナルクラブ

今回のジャーナルクラブの文献は、7つのRCTシリーズの続きで、以下の論文を読みました。
Gade G, et al. Impact of an inpatient palliative care team: a randomized control trial. J Palliat Med. 2008 Mar;11(2):180-90.

米国のコロラド、ポートランド、サンフランシスコで実施されたものです。入院中の多職種緩和ケア介入(医師、看護師、ソーシャルワーカー、チャプレンからなるチーム)を行った群と、通常のケアの群との間で、QOL, 患者満足度、医療資源の使用状況、アドバンスケアプランニング(Advance Care Planning)の実施度について比較評価しました。対象患者は、担当医が疾患に関わらず予後予測が1年以内と判断した患者で計517人が参加。3箇所とも同じマネジドケア機関管轄の病院であったようです。

多職種緩和ケアコンサルト内容は、以下の6つの要素から成りこれにそってサポートを行ったとしています。1.現状把握,2. 医学的問題のディスカッション, 3. 終末期ケアにおいて患者が自分の目標をみつけられるように援助すること, 4.身体症状の評価と治療, 5.心理面、スピリチュアル面、実際的なニーズの評価と援助,6. 退院計画の評価。
一次アウトカムとしては、症状コントロール、感情面やスピリチュアルなサポート状況、患者満足度、介後6ヶ月時点の医療コスト。二次アウトカムとしては、生存の有無、退院時の事前指示の数、介入6ヶ月後のホスピス利用数を測定しました。

結果は、一次アウトカムのうち、症状コントロールは有意差がなく、患者満足度は向上し、医療コストは軽減されていました。二次アウトカムでは、退院時の事前指示の数が有意に上昇していました。
この研究では、リクルートされたがん患者の割合が半分以下(30%前後)ということで、日本では同じようにはいかないですね。

疾患別の表が提示されているのでそれらの合計を合わせてみると、100%にならないので
どうしたものかと、介入群と対照群について合計の患者数を計算してみると、おやっ?介入群と対照群が逆さまなのでは、と気づきました。これは早速執筆者に連絡しなくちゃっ!

以上、この論文も入院での多職種緩和ケア介入によって、患者の満足度は向上し、かかって医療費が少なくなった、との結果でした。生存日数の長さは、1次アウトカムにしておらず、これは緩和ケア研究の特徴ですね。皆さん覚えているでしょうか?緩和ケアの定義では、
緩和ケアは寿命を延ばすことも、短くすることも意図せず、自然の病気の経過にそってケアを行うということでしたね。この定義をふまえて緩和ケアの研究ではあえて、寿命は1次アウトカムには
しないということですね。あくまでも患者のQOLや満足度を第一の目標にします。

                                                   (文責 関根)

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