2012年10月2日火曜日

ジャーナルクラブ

先週のジャーナルクラブは、緩和ケア介入とQOLに関するRCT研究シリーズの3つ目。
Brumley R, Enguidanos S, Jamison P, et al. Increased satisfaction with care and lower costs: results of a randomized trial of in-home palliative care. J Am Geriatr Soc. 2007;55(7):993-1000. を読みました。

この研究では、在宅緩和ケア介入を予後1年以下が見込まれる患者に行っています。
通常、終末期の定義は予後6ヶ月とされますが、もっと早期から介入を開始した場合の評価をみていること、介入対象をがん患者と非がん(心疾患、呼吸器疾患)の両方を含めていることが特徴です。結果として、患者の満足度は向上。また自宅死割合が上昇、入院や救急受診回数は減少(総医療費は減少)しました。

この研究の気になる点は、介入群の方が対照群より生存日数が短かったことです。考察では、この原因に関する明確な理由について述べられていません。可能性の高い一仮説としては非がん疾患の場合は、なんらかの疾患特異的治療が存在しこれが施されうるため、救急受診や入院をすれば、生存日数が延長することが知られています。よって、もし非がん患者でも入院や救急受診回数が減少したことによって、非がん患者群でコントロール群より少し早めの多くの患者が死亡していた可能性があります。患者の満足度の高い医療と生存日数延長は全く別のアウトカムであるという現象がここでも見られています。

この研究は、米国の2つ州(ハワイ州とコロラド州)で実施されましたが、緩和ケア介入の研究では、救急受診や入院というのが好ましくないアウトカムであると位置づけられています。
一方、日本で行われた緩和ケアの遺族研究では、救急受診は否定的には受け止められていないことが分かっており、この点、日米の興味深い違いが浮き彫りになっています。

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