2012年10月26日金曜日

オピオイド注射剤の残薬は病棟で破棄すべきか?

日本では、皆さんご存知のとおり、医療用麻薬の管理、とくに注射剤は厳重に管理されています。
たとえばモルヒネ注射液1アンプルのうち一部分を使用した後は、使用量と残量を所定の用紙に記入後、病棟看護師が薬剤部に返却することになっています。
一方、あまり知られていませんが、米国の病院では、オピオイドのアンプルの一部分のみを使用しても、その残薬を処方された病棟の現場で破棄しているようです。

日本でオピオイドの注射剤のワンショット投与を定期処方や頓用処方として出しずらいことの大きな理由のひとつに、アンプルの中身を部分的に使った場合に、その都度所定の書類に記入し、毎回薬剤部に返却するというわずらわしい作業があることが挙げられます。

米国では、経口内服が困難な場合には、たとえばモルヒネ2mg iv q4h というような医師処方が日常的にみられるのですが、日本では殆どみかけることがありません。こんな処方を出したら、残薬の処理に手間をとられて病棟ナースから大ブーイングでしょう。医師としてもただでさえ多忙な看護師の仕事を増やすことは気がひけますから、このような指示を出すことは心情的にもないでしょう。

日本の人口1人あたりのオピオイドの総使用量が米国の20分の1であることは有名な話ですが、
注射剤の管理の厳重さ(煩雑さ)が、注射剤使用の敷居を高いものにしていることはあまり話題にもなっていません。

WHOがん疼痛治療方式は経口投与を原則にする、というものですが、中等度以上の痛みが持続するような場合や激しい突出痛に対しては、注射剤をしっかり活用して迅速な痛みのコントロールを図る選択肢が日常的に用意されている方が、患者のQOLにとっては大いにプラスになるでしょう。

わが国で、より良い痛み治療のために、注射剤を含めた医療用麻薬の管理を今後どのようにしていくべきか、国民全体での議論が必要です。                      (文責 関根)

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